長期優良住宅について

そろそろ夢のマイホームを・・と検討し始めて色々調べていくうちに、「長期優良住宅」というワードにぶつかることがあるかと思います。
調べれば調べるほど内容が複雑でよく分からないというお悩みをよく頂戴します。
「長期優良住宅」とは、具体的にどんな家なのか?どういう家なら認定されるのか?
など、くわしく解説していこうと思います!
長期優良住宅とは!?

長期優良住宅とは、
「長期にわたり良好な状態で長く住み続けられると国から認められた住宅」のことを言います!
と言っても、いまいちしっくりこないかもしれません。
大きく分けて以下の5つの措置が講じられている住宅を指します。
1.長期に使用するための構造及び設備を有していること
2.居住環境等への配慮を行っていること
3.一定面積以上の住戸面積を有していること
4.維持保全の期間、方法を定めていること
5.自然災害への配慮を行っていること
上記の項目で基準をクリアし、認定されていることが条件となります。
長期優良住宅の認定基準

※一戸建てと共同住宅等では一部異なる点がございますが、ここでは戸建住宅について説明しています。
①耐震性
数百年に一度程度の極めて稀な地震が発生しても、損傷レベルを提言できる措置が施されている必要があります。住宅を継続仕様するための改修を容易にすることが目的です。
②省エネルギー性
断熱性能と一次エネルギー消費量性能の両面で高い基準を満たす必要があります。具体的には、断熱等性能等級5以上、かつ一次エネルギー消費量等級6以上が求められます。
③劣化対策
住宅が数世代にわたって使用できるよう、構造躯体の劣化を抑制し、長寿命化を目的とする対策のことです。新築・既存共通の基準として劣化対策等級(構造躯体等) 等級3が必須。具体的には、床下空間の有効高さ確保や、床下・小屋裏の点検口設置などが定められています。
④居住環境
「良好な景観の形成その他の地域における居住環境の維持及び向上に配慮されたものであること」を判断するための基準です。地区計画、景観計画、条例によるまちなみ等の計画、建築協定、景観協定等の区域内にある場合には、これらの内容と調和を図る必要があります。
⑤維持保全計画
良好な状態の住宅に長く住み続けるために、 維持保全計画にしたがって定期的な点検・補修等に関する計画が策定されている必要があります。
⑥維持管理・更新の容易性
住宅に使われる設備や配管は、構造躯体よりも短寿命です。それらの点検や清掃、補修、更新を容易に進められる措置が講じられていることも長期優良住宅の基準となっています。専用配管の維持管理対策等級(専用配管)等級3が必要です。
⑦居住面積
人が心地よく快適に暮らせるよう、床面積も決められています。一戸建て住宅の場合、床面積の合計75㎡以上、かつ少なくとも1つの階の床面積が、階段部分を除いて40㎡以上なければなりません。
⑧災害配慮
自然災害が起きたときに、被害を防止・軽減できる措置が必要です。災害発生のリスクがある地域の場合はリスクの高さに応じて所轄行政庁が定める措置が必要になります。これらの長期優良住宅の基準認定を受けることで、住宅ローンの金利優遇、税金面の優遇が得られるなどの、金銭的なメリットが大きいのも魅力です。
長期優良住宅っていつからあるの?

長期優良住宅の認定制度は、2009年6月4日に施行された「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づいて始まりました。この法律は、長期にわたり使用可能な質の高い住宅を整備・普及させていくために講ずべき住宅の普及を目的としています。
この事業が始まった時代背景としては、日本全体の人口・世帯数の問題や経済問題、また一方で、地球環境の保全といった問題があります。老朽化・陳腐化したものを取り壊し、新しいものに置き換える「スクラップアンドビルド」の概念ではやっていけない、住宅の長寿命化が必要だという考え方でこの事業が始まりました。1999年に住宅品質確保法が制定され、住宅の品質や性能に関する法制度が創設されました。2006年には、住宅政策を、「量の政策」から「質の政策」に転換すべく、それまでの住宅建設計画法に替わって住生活基本法ができました。「国民の豊かな住生活の実現を図るため、住生活の安定確保及び向上の推進に関する施策について、その基本理念、国等の責務、住生活基本計画その他の基本となる事項について定める」という、新しい法律です。ここで豊かな住生活の実現のための基本概念と到達目標が決定されました。
長期優良住宅認定を受けて得られるメリット

一定の認定長期優良住宅の新築又は建築後使用されたことのない認定長期優良住宅の取得を行った場合、所得税、登録免許税、不動産取得税、固定資産税が軽減されます。
また、既存の認定長期優良住宅を取得した場合、所得税が軽減されます(住宅ローン減税のみ)。
なお、固定資産税の特例措置は5年間(マンション等の場合は7年間)の措置であり、6年目(マンション等の場合は8年目)から固定資産税の額が”元に戻る”ことになります。固定資産税が”増税”されるわけではありません。
①税の特例措置が受けられる
不動産所得税
不動産所得税の控除額が一般の住宅よりも高くなります。(※増改築物件は該当しません)
登録免許税
登録免許税は、通常不動産価格の0.15%を納める必要がありますが、長期優良住宅だとこの割合が低くなります。また所有権移転登記の税率も軽減されます。(※増改築物件は該当しません)
固定資産税
減税措置の適用期間が通常より延長されます。(※増改築の場合、耐震リフォーム・省エネリフォームのいずれかの実施が必要)
所得税
2025年12月31日までに入居した場合は、所得税にも特別措置が適用されます。
住宅ローン減税の控除対象限度額の引き上げ、投資型減税も減額となります。(※増改築の場合は、耐震、省エネ、耐久性リフォームが対象)
②住宅ローン金利が引き下げられる
住宅ローンの金利引き下げ
借入金利が期間限定で引き下げられる場合があります。
【フラット35】では、省エネルギー性や耐震性などを備えた質の高い住宅を取得する場合、借入金利を一定期間引き下げる制度である【フラット35】Sがあります。
長期優良住宅の場合、【フラット35】維持保全型と【フラット35】S(金利Aプラン)を併用することができ、その場合、当初5年間は年0.75%の金利引き下げとなります。【フラット35】S(金利Aプラン)では、当初5年間0.5%、【フラット35】維持保全型では当初5年間0.25%、その2つの併用で当初5年間0.75%の引き下げを受けられるため、借り入れ当初の返済負担を軽くすることができます。
長期優良住宅の場合、最長50年間の長期固定金利住宅ローン【フラット50】を利用できます。返済期間を長期にすることで毎月の返済額が下げられるメリットがあります。また、住宅ローン返済中に長期優良住宅を売却する事情が発生しても、次の購入者に住宅ローン返済を引き継ぐ住宅ローン付きでの売却が可能になります。
③補助金制度の利用
木造新築には補助金が交付される
木造の新築物件を建てる場合、「地域型住宅グリーン化事業」から補助金が交付されます。
増改築の場合の補助金
増改築工事にも補助金が交付されます。さらに省エネ性能向上のリフォームには補助金が上乗せされる場合もあります。
※補助金制度の利用には条件がありますので、利用の際はご確認をお願いいたします。
④地震保険料の割引制度
耐震等級3の認定を受けると地震保険料が50%割引、耐震等級2では30%割引になります。免震建築物でも50%の割引きが受けられます。
昨今では火災保険と併せて地震保険にも加入する方も多いため、地震保険の割引で入居後の負担を減らせるのはうれしいポイントです。
ZEH基準住宅との違い
長期優良住宅は、長く安心して快適に住み続けられる耐久性の高い家を目指すのに対し、ZEHは年間のエネルギー消費量の実質的なゼロを目指す家です。この目的の違いから、それぞれの認定基準や適用される優遇制度・補助金制度も異なります。
光熱費を削減するために省エネ性能を重視するならZEHが適しており、省エネ性能に加えて、災害への強さや長期的な快適性を求めるなら長期優良住宅がより適していると言えるでしょう。
最後に

長く快適に暮らしを継続できる長期優良住宅。認定を受けることで安心した生活を送れるだけでなく、税制面や住宅の資産価値においてもメリットがあり、将来的にも経済的な効果が期待できます。快適な住まいは日々の暮らしをより豊かなものにしてくれます。耐震性を満たすことで、大きな地震でも家の損傷を抑えやすくなり、住み続けるための改修も容易に行えます。また省エネ性を満たすと断熱性が高まり、エアコンなど空調機器の効きが良くなるため、少ないエネルギーで夏は涼しく・冬は暖かく過ごせる家になります。高い性能によって快適かつ安心して暮らせる家は、次の世代にわたり住み継げることで目的を果たすと言えるでしょう。